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No.008「ヤミーについて」



対戦技術向上コラムの最後となる本節では、
対人戦において最も影響力のあるモンスターだと思われる
「ヤミー」についての考察を通して、
「ストーン効率」と「自由度」についての話をします。

ヤミーは攻撃力が高いわけでもHPが多いわけでもありません。
それにも関わらず対人戦で重宝されるということは、
特技「いただきぃ」の価値が高いということに他なりません。
「相手のストーンを2コ減らし、自分のストーンを1コ増やす」
この行動はどれほどの価値があるのでしょうか。

ストーンの変動は「相手が−2」で「自分が+1」なので、「差し引き+3コ」です。
もちろん同じ+3でも、「自分が+3」や「相手が−3」とは意味が違いますが、
ストーン効率を元に行動の価値を考える上では、
この数字を元に考えたので構わないでしょう。

ストーン3コと言えば、ブラックだと「バーサクパワー」1回分です。
なので少なくとも、「ストーン3コ」は「1ダメージ」と同じだけの価値はあります。
ブラックのデッキには「ポリゴマ」や「シゴトにん」など
相手マスターに直接ダメージを与えられるモンスターが入っていることが多く、
これらを使う際に必要なストーンは3コより少ないので、
「ストーン3コ」は「1ダメージ」よりも価値が高いと考えることができます。
ということは、
ヤミーの「いただきぃ」は相手マスターに1ダメージ与える行動より
価値があるということです。
ブラック速攻デッキで「ポリゴマ」「シゴトにん」と並んで
「ヤミー」が必須カードとなる理由の一端はここにあります。

ストーン3コはホワイトだと、
「ハードシールド」または「ウェイクアップ」を1回使ってもまだ1コ残ります。
「ハードシールド」や「ウェイクアップ」の価値は
その後の行動によって変わってくるので、計算するのは難しいですが、
レベルアップしたモンスターを1ターン守ったり
相手からの攻撃を1回防いだりする使い方は簡単にできるでしょうから、
ホワイトでも「ストーン3コ」は「1ダメージ」よりも価値が高いと言ってよさそうです。
しかしホワイトでは、「ビター」「ガスキン」「ダイン」といった、
レベルを上げれば2ダメージ以上与えられるモンスターを
「ハードシールド」で守りながら何ターンも使い続けることができるので、
「『いただきぃ』は『1ダメージ』よりも価値が高い」ということだけでは
それらのモンスターと単純に比較して優劣を付けることはできません。
ここでは、
「ビター」「ガスキン」「ダイン」のような攻撃型モンスターは
互いに互いが代わりに使えるのに対し、
「『ヤミー』の代わりができるモンスターはいない」
という事実が、ヤミーがよく使われる理由の一つになっているのでしょう。

ところで、あまりに当たり前のことですが、
カードヒーローでは、相手マスターのHPを0にすれば勝ちです。
それ以外の手段で勝てるのは、
バトル開始から30ターン経過後に
相手マスターより自分マスターの方がHPが多かった場合だけですが、
そのような状況になることはほとんどありません。
また、どちらにしても、
最終的に勝負を決めるのはマスターのHPであることに変わりはありません。
相手のモンスターをたくさん倒しても、
相手の山札が先に全部なくなっても、
自分がストーンをたくさん貯めても、
最終的にマスターのHPで負けているなら、そのバトルは負けです。
つまり、「相手のモンスターを殲滅する」「自分の手札が尽きないように工夫する」
といったことを含め、
全ての行動は相手マスターのHPを減らすことが最終目的になっています。

カードヒーローでは、ストーンが全ての行動の源になっており、
支給されるストーンの数は自分も相手も同じなので、
ストーンを効率よく使えた方がバトルに勝つと考えていいでしょう。
「ストーン効率がいい」とは「ストーン1コあたりの生み出す価値が高い」
と言い換えることができます。
効率よくストーンを使うには、「プレイ」がうまいのはもちろんのこと、
「デッキ」が効果的に組めていることも重要です。
そもそも「デッキ」とは、バトル開始前にストーンの使い方を規定したもの
という考え方もできます。
そして、ヤミーで相手のストーンを奪うということは、
相手より支給ストーン数で優位に立つということなので、
ストーンを効率よく使えるプレイヤーほど、
ヤミーを有効に使えていると言えるでしょう。
ヤミーの価値は、奪ったストーンをどう使うかで決まると言っても過言ではありません。

さて、ヤミーで相手のストーンを奪うことの利点を、
「差し引き+3コ」とは違う面から見てみます。
実戦では、相手がストーンを1コしか持っていないときでも、
「いただきぃ」を使って奪っておいた方がいい場合がよくあります。
この場合のストーンの変動は、「相手が−1」だけなので、
「差し引き+1コ」にすぎません。
なぜこの行動が有効なのか、その答えは「自由度」の考え方にあります。

あるターンにおいて、そのターンで取れる有効な行動の多さを「自由度」と呼んで表すことにします。
フィールド状況と手札状況が一定の場合、ストーン数が多いほど自由度が高くなり、
自由度が高いほど最善手もいい手になりやすいです。
ここで、自由度はストーン数に正比例するわけではないことがポイントです。
具体例を挙げずに抽象的な説明をしますが、
大抵の状況では、ストーンが4コの場合は、3コの場合の数倍の自由度があることが多いです。
また、4コと5コで比べた場合も同様に、5コの場合の自由度は4コの場合の数倍高くなるでしょう。
ストーン数が少ないうちは1コの重みが大きいので、
ストーンが1コ増えて使えるマジックや特技の数が増えれば、
取れる行動の選択肢の幅が大きく広がる
からです。
一方、ストーン数が15コの場合と20コの場合を比べても、
自由度の差はそれほどない場合が多いと思います。
ストーンが一定数を超えると、
使いたいマジックや特技を使いきることができるので、
取れる行動の数は頭打ちになる
からです。

ヤミーで相手のストーンを1コだけ奪うときのことを考えてみると、
これは、相手の次のターン開始時のストーンを
「4コ」から「3コ」にしているということなので、
相手の自由度を大きく下げていることになります。
奪う数は1コでも、その1コの価値が大きいのです。
2コ奪う場合でも基本的に、
相手の所持ストーンが少ないほど効果は大きいと言えます。
見かけ上のストーンの変動数以上の価値が、
ヤミーの「いただきぃ」にはあるのです。
これがヤミーの強さの秘密だと言っていいでしょう。
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