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コラムNo.003「デッキ論」



カードバトルをする者なら誰でも、
「どんな相手にも負けないデッキを作りたい」という思いはあるでしょう。
強くなるためにはこのような気持ちは必要だと思います。
しかし一方で、
「最強のデッキ」というものは存在しないということを
事実として認識しておくことも大切だと思います。
最強のデッキが存在しないと言い切れる根拠は二つあります。

一つ目の根拠は、デッキの相性があることです。
この相性とは、「黒速攻と黒殲滅と白殲滅は三すくみの関係である」といった
単純なデッキコンセプトの違いによるもののことではありません。
デッキコンセプトの違いによる有利不利がないとは言えませんが、
現在のところ、よく練られたデッキ同士の対戦ではそれほど感じられません
(明らかに弱いコンセプトはありますが、最強と呼べるようなコンセプトはありません)。
では何の相性かというと、それはデッキに入れているカード単体の有効度の相性です。
次の二つのデッキを見比べてみてください。

デッキA:ブラックマスター


デッキB:ブラックマスター



どちらもブラック速攻デッキで、30枚中22枚が同じカードです。
違いは、デッキAの「チャーミ・ガァガ・パワー2・バイコストーン(各×2)」が
デッキBでは「ラブレー・ナイリー・あくまのダンス・ジアーゲン(各×2)」になっています。
このそれぞれの8枚のカードの役割はどちらのデッキも主に、
「相手モンスターのきあいだめ外し」と「自分のマスターへの攻撃の足止め」です。
二つのデッキのコンセプトおよび戦略はほぼ同じですが、
デッキAはブラック相手に強く、デッキBはホワイト相手に強い構成になっています。
この二つのデッキをそれぞれ使ってホワイト相手の対戦を繰り返せば、
勝率が高くなるのは断然デッキBの方でしょう。
しかし、この二つのデッキ同士で対戦を繰り返したならば、
デッキAが圧勝しそうです。
相性とはこういうことです。

二つ目の根拠は、「最強のデッキ」として固定されたデッキを何度も使っていると、
「対戦相手にそのデッキの内容を把握されてしまう」という
致命的な問題が発生することです。
相手のデッキにどんなマジックが入っているか分かっていればそれだけで
非常に有利にバトルを進めることができることは、
対戦経験の多い人なら具体例を挙げるまでもなくお分かりになるでしょう。
抽象的な表現になりますが、
相手にその内容を知られている100点のデッキと、
知られていない80点のデッキでは、実戦で強いのは後者です。

以上、最強のデッキが存在しないことを説明してきました。
ここで結論として言いたいのは、
「どうせ『最強』が存在しないのなら、自分の好きなデッキで戦おう」
ということです。
他人が作った強いデッキを真似して使うより、
自分の好きなカードを使って戦う方が楽しいものです
(他人のデッキを参考にすることを否定する訳ではありません。
 技術向上のためには、それはとても有意義なことです)。
もちろん強いデッキのセオリーはあるので、
どんなデッキで戦っても勝てるというわけではありません。
大切なのは、自分でバトルの流れをイメージし、デッキに入れるカードを選び、
実際に使ってみて、デッキの内容を見直す、という一連の流れです。
この過程を繰り返せば、強いデッキが作れるだけでなく、
「読み」の力も上達するのです。
また、他の人がほとんど使ってないカードを組み込んだ強いデッキを作ることができれば、
注目されることは間違いないでしょうし、
その後の対戦界に何がしかの影響を与えることも大いにあり得ると思います。

最後に、
強いデッキが完成しても、固定したデッキ内容のまま何戦もするのではなく、
多少面倒でも1戦ごとに数枚入れ替えるようにすることをお勧めしておきます。
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